西岩部屋おかみさんブログ

大相撲西岩部屋の備忘録として利用しています。【公式twitter】https://twitter.com/nishiiwabeyaです。

日々ありがとう

若小山
この夏場所初土俵を踏みました。
67キロぎりぎりで新弟子検査に合格。
今場所は土俵に上がっていることだけでも凄いことですのに、大きな相手に足をかけてみたり、最後の最後まで諦めない相撲はとても感動的でした。
「お疲れ様でした。頑張ったね。」と言うと、下を向き、少し間が空きました。
「一番くらい勝ちたかったです」と、やっと作ってくれたはにかんだ笑顔でこちらを見ました。
今の小さな体がいつか良い思い出に変わります。
今場所は、力士になった喜びを体いっぱいに感じてください。

若小菅
若小菅もこの夏場所、67キロぎりぎりで新弟子検査に合格し、初土俵を踏みました。
国公立大学への進学を目指していましたが、相撲が大好きで、方向転換し、力士になる決意をした若小菅。さすがによく相撲を知っていると親方も唸ります。
惜しい取組が何番もありました。体が大きくなれば勝てるだろうと親方も今後を楽しみにしています。
新序出世披露が行われました中日には、茨城県土浦市から御両親が国技館までいらっしゃいました。
まだ空席も多いお昼の時間帯ですが、一階の一番後ろの隅でずっとお立ちになったままご覧になっていました。
新序出世披露の時だけ少し足を前に進めて、、、
我が子の選んだ道を応援される御両親の、控えめで愛おしい眼差しがとても印象的でした。

若藤岡
今場所はじめて番付に四股名が載りました。
こんな事をここに書いて良いか分かりませんが、大阪場所の初土俵で、若藤岡は前に手をついて黒星を喫した際、その土俵についた手で土俵をひとつ叩いて悔しさを表しました。
「悔しい気持ちはわかるけど、そういう事はしてはいけない」と親方がその意味も含めて若藤岡に教えました。
私はその取組を生涯忘れないと思います。
対戦相手は相撲経験者であろう大きな子でした。
若藤岡は、その大きな相手に勝ってみせるという自信があったから、そこまで悔しかったのでしょう。
"行為は叱っても、勝ちたかった前向きな気持ちは褒めてあげよう"
そう思いました。
今場所、土俵への感謝、丁寧な所作を意識して土俵に上がっています。そして、負けた日は一人で歩いて部屋まで帰ってきているようです。
15歳。若藤岡のどこまでも真っ直ぐな気持ちに、私も勉強させられます。

若松永
若松永も今場所はじめて番付に名前が載りました。
中日と9日目は大阪市平野区から御家族の皆様が国技館まで応援に駆けつけてくださいました。
早朝から長蛇の列に並んで手にされた当日券。決まりを守って応援したい、と2階の一番後ろの椅子席でご覧になったそうです。
熱く誠実な応援のご姿勢は、いつも正々堂々と真正面からぶつかっていく若松永の相撲と重なります。9日目の相撲は一気の押しで素晴らしい勝利でした。
前日に足を負傷いたしました。そんな中であの勝利は信じられません。まだ小さい弟や妹の声援もしっかり若松永に届きましたようです。
誰かの笑顔のために戦う。
それがきっと一番稽古の成果を発揮できます。
そして、誰かのためがいつの間にか自分のためになることでしょう。

若中谷
先場所、一番出世すると宣言し、目標達成。
序ノ口17枚目で今場所に挑んでいます。
夢は横綱になること。とても頼もしい言葉です。
場所前、出稽古から帰ってきた際、口の中を気にしてずっと痛みに耐える様子で顔を歪めていました。
親方にも、私にも、自分から何も言ってこないため、心配になり問い質しました。
歯がかけていることが分かり、すぐに歯医者さんへ行きましたが、「休場はしたくない」という意思を先生に示している姿に逞しさを感じました。
場所後にしっかりと治療しましょう。
入門時にふっくらとついていた脂肪が毎日の稽古で削ぎ落とされ、体型もがっちりとしてまいりました。
西岩部屋ではアスリートの食について、講師の先生をお招きし、勉強会も行なっています。一旦脂肪の落ちた若中谷がここからどうプロの力士らしい体になっていくか親方も楽しみにしています。
寡黙に頑張る姿を親方はいつもしっかり見ています。

若野口
下の子たちが次々入門し、立場がお兄さんになってきましたせいか、「近いんで一人で行けます」「自分でできると思うんで大丈夫です」と自立心を見せてくれることが増えました。
その行動を頼もしく思い、ついつい「じゃあお願いしますね」と私も言ってしまいますが、後になって、やっぱり一緒に行ったほうがよかった、一緒にやったほうがよかった、と後悔することも多いです。
そんな若野口が、先日親方に「浴衣が破れてしまったので裁縫道具ありますか?」ときいていました。
"...裁縫道具ありますか?"
自分でしようとしている言葉です。
親方も、「自分たちの頃はこういうのも自分で縫ったんだよ。やり方わかるか?」と続けます。
「針に糸を通して玉結びするんですよね?」と若野口。
若野口が大部屋に戻った後、親方に訊いてみました。
「本当にお相撲さんは裁縫も自分でしないといけないの?」
すると、決まりはないと。だったらと思い、引き取ることにしました。親方が若野口に「おかみさんが縫うから浴衣持ってきなさい」と言ってくれました。
「ごっちゃんです!!」
今までで一番可愛く大きな声でした。
子供らしい声に嬉しくなりました。
若野口が浴衣を持ってきました。2枚も抱えています。
それでいいのです。
体は大人のように大きいですが、まだ17歳です。甘えるところはどんどん甘えてください。

若佐竹
一番弟子です。
誰が何を失敗しても、「若佐竹がまずしっかりしないといけないんだ」といつも名前を出され、親方から指導を受けます。
親方も現役時代、部屋の古参であったため、風当たりは一番強かったとよく申しております。
ただ、やはりそれが辛いときもあるはずです。
そんな時、自分は、親方の考えを否定せずに、若佐竹の味方になり、かばい、寄り添う存在でありたいと思うのですが、若佐竹を想い自分のとった行動が結果的に親方に楯突くことになってしまったり。反省の日々です。
「お母さんに親孝行したいから力士なりたい」と入門志願してきた子です。
来月二十歳になる若佐竹を親方としっかり役割分担しながら大事に立派な大人に育ててまいりたいと思います。


自宅階のインターホンが鳴り、「おかみさんいますか」と若佐竹の声がしました。
玄関できちんと7人全員浴衣に着替えて正装し、整列していました。
「若い衆からです」とお花をいただきました。
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5月13日、母の日でした。
"母の日におかみさんにお花を渡す"
教えていない事をしてくれたという驚きと喜びで、感極まりました。
外は雨でした。
いつの間にどうやって買いに出掛けてくれたのだろう。傘からはみ出た身体が濡れて、冷えたりしていないだろうか、お小遣いは大丈夫だろうか、いろんな心配が頭の中を駆け巡ります。

力士としてではなく、部屋の中では子どもとして、常にフラットな眼で7人を見ること。
こうなってほしい、こうしてほしいと思わずに、まず一人一人の性格をゆっくり知ること。

それぞれの性格を、一つ屋根の下で一緒に住みながら、そして実家の親御さんと連携を取りながら、細かく知ってまいりたいと思います。
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親方が作った花瓶に飾りました。
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若佐竹、若野口、若中谷、若松永、若藤岡、若小菅、若小山、

こんな私をおかみさんにしてくれてありがとう。



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若佐竹が撮ってくれたスカイツリーの写真です。期間限定特別ライトアップでいろんな色に光り輝いています。
千秋楽まで皆んな精一杯頑張ってください。