秋場所を終え、休暇中の木曜日、
午後17時前、お相撲さんたちが一人二人と下に降り、玄関を出ます。
外はすっかり涼しい秋の風となり、何処からともなく金木犀の香りがほのかに漂う中、兄弟子たちが"そろそろかな"と、親方と若鳥海の帰りを待ちます。
9月26日
相撲教習所の卒業式です。
相撲教習所では、入門から約半年間、実技と教養、力士としての心得を学びます。
若鳥海は、「卒業証書」ともう一枚、「賞状」もいただきました。
皆勤賞、精勤賞、優等賞と三つの賞がある中で、もっとも良い"優等賞"です。
式に出席いたしました親方も、よく頑張ったんだなと大変驚いていました。
足を負傷しました際も、先生方、指導員の方々がお気遣いくださいましたようです。学校の勉強はあまり好きではなかったと聞いていましたが、何せ部屋での仕事ぶりを見ていましても地頭の良い子です。自分が今ここに居る意味を考え、「大相撲」の勉強は、学校の勉強以上に一生懸命頑張ろうと心を入れて励んだことと思います。
お世話になりました皆様に、厚く御礼申し上げます。
翌27日は、若鳥海18歳のお誕生日でした。
ケーキを切り分け、食べながら、親方が皆に向け、自身の昔話を交えながらいろんな話をしました。力士として力士らしく今を大切に過ごすこと。
夜遅くのお誕生日会となりましたが、場所後やっと全員でホッとできたような時間でした。
長野から東京に出てくる際、駅までお見送りしようとしてくれたお姉さんの優しさに素直になれなかったことを本人は後悔しています。
親方はそのことを知り、「それは人として一見いけなかったことなのかも知れないけれど、17歳の男の子なんだからそれが健全なこと。ちゃんと17歳らしく育っている。そういうのが無い子もいるけど、塁は年相応でそこがすごくいい。」といいます。
まだ若鳥海は入門から一度も故郷の長野に帰っていません。
身も心もしっかり相撲部屋において集中しています。
18歳、ひとつ大人になりました。
いつか近い将来、帰省する時が来ましたら、お姉さんに東京での暮らしをたくさん報告するのが楽しみですね。
9月30日
稽古始めの夜、兄弟子たちと筋トレに励んでいました。
「塁!塁!」と皆んなに慕われ、今日も頑張っています。