西岩部屋おかみさんブログ

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2019/08/22 若鳥海 相撲教習所最終日

朝、浅草の町が目を覚ます前、まだ何の音もない朝の空気を割るように、カランコロンと下駄の音がこだまします。
この光景をそっと見るのも、今日と明日で最後です。
記録に残しておきたくて、三階の自宅階のベランダから撮影させていただきました。

町はまだ眠っていましても、若鳥海の健気な頑張りは、毎日誰かが見ています。



部屋に同期の力士はいません。
いつもこうして、まだ兄弟子たちが寝ている時間に携帯電話のアラームに起こされて一人で起き、二度寝も遅刻もせず、身だしなみをきちんと整えた格好で、玄関から出てまいります。
朝が強い子は、自分に強い子。
入門してから今日まで、若鳥海から甘えた言葉はまだ聞いたことがありません。

西岩部屋では、ゴミは当番制を設けております。
各責任者を決め、燃えるゴミの責任者、資源ゴミの責任者、などそれぞれ担当を振り分けています。
この日、若鳥海はゴミ当番ではありません。
それでもペットボトルが入ったゴミ袋を四つも下げて降りてまいりました。
自分は教習所への出掛けついでだからと、兄弟子たちの負担を少しでも軽くするために、両手に持てるだけのゴミは持って出ようという自らの気遣いです。


相撲の面にも同じように表れます。
親方は何も口には致しませんが、若鳥海が兄弟子たちと少し時間をずらし、一人で黙々とトレーニングしている姿を知っています。
「地元の長野県から知人が来ていますので会いに行ってきます」と私用で出掛けた日も、夜遅くなる事なく部屋に戻り、トレーニングに励んでいました。
あの日、稽古場の扉を開け、「この時間は一人か」とだけ言ってまたすぐに扉を閉めた親方でしたが、自宅で静かに若鳥海を褒めていました。

入門時に比べて腕は筋肉で盛り上がり、倍ほど太くなりました。
何事にも前向きな、若鳥海の努力の賜物です。




いつも相撲教習所から帰ってくる際、どんなに暑い日でありましても、一階から階段を上ってくる下駄の音が元気いっぱいで軽やかだったこと。
チャイムが鳴り、扉を開けますと、額に玉汗を掻きながら、大きな声で元気に挨拶をして、頭を上げ、姿勢を正し、必ず笑顔を見せてくれたこと。
この二つがとても印象的でした。
その姿ももうあと一日で見られなくなってしまうと思いますと、寂しい気持ちになりますが、これが成長です。

若鳥海はとても成長が早い子です。
大事な瞬間を見逃さないようにと、こちらが頑張ってしまいます。





日付が変わり、8月23日。
今日が若鳥海にとりまして、相撲教習所最終日です。
一人でよくここまで頑張りました。
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今日も大切に一日を過ごしてください。




この二枚の写真は入門したての若鳥海です。
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今は全然違う体になりました。
9月場所の土俵で皆様にお気に留めていただけましたら幸いです。

半年間ご指導くださいました相撲教習所の先生方、講師の先生方、支えてくださいました皆様に心より感謝申し上げます。誠に有難うございました。