東京は朝から青空が広がっています。
立春を過ぎ、先月までの厳しい寒さが和らいで、このまま春を運んできてくれるかのような暖かさです。
週の始まり、
今週もまた、稽古場に元気な声が響きます。
先ず最初に目に飛び込んできましたのは、今までと違う目をして土俵の外で、休むことなく体を動かす若箭原です。
二度の手術を経て、まだ万全ではない中、今自分ができることをと、地元大阪場所での完全復帰を目指し、頑張っています。
平穏無事の毎日よりも、苦しい経験をし、絶望の一歩手前で自ら奮い立ち這い上がる経験こそが、自分が一皮剥ける切っ掛けとなり、乗り越えることで大きく成長するということを、若箭原は体現しています。ここが踏ん張り時とまだ17歳ながらにしっかり理解しています。
同期4名の中では、一番ゆっくりしているところがあるのですが、その分、物事の本質をじっくり時間を掛けて考え、理解する能力に長けています。
親方のこの言葉にはどういう意味が込められているか、親方は今自分たちにどうなって欲しいと望んでいるか、相手の気持ちがよく解る優しい心を持っています。
二度、立て続けに行った手術の辛さは、必ず心の強さに変わり、ここから若箭原はどんどん本気で相撲に取り組む事と思います。
これからもいろいろな事がありますが、若箭原自身がいつも言っていますように「全て修行」。そう思って一つ一つの山を乗り越え、頑張って、大好きな家族を笑顔にして欲しいと願っています。
透輝の里の容赦ない投げに膝をつき、なかなか立ち上がれないでいるのは、若金子です。
主治医の先生からも、もう思いきり相撲をとっても良いと診断され、稽古場でももう皆と同じ稽古をしています。
立ち上がっては、膝をつき、その繰り返しですが、
ここで親方から檄が飛びます。
自分の番が終わっても、
「休まない!
すぐに立って、四股!」
「はい。」
大きな声と共に立ち上がり、すぐさま四股を踏み始めます。
どんなに厳しい稽古にもついてくる若金子。
その前向きな根性は、「絶対こうなる。」と決めて西岩部屋の門を叩いた入門時から変わらない自身の夢の大きさと比例しています。
八女の里もまた自分の名前が呼ばれるまで、土俵の外でずっと体を動かし続けていました。
汗の量は、いつも一番です。
気持ちに波が無く、いえ、気持ちに波はあるのかも知れませんが、誰にもそれを見せません。
どんなときも、不平不満を口にせず、態度にも見せず、ただひたすらにコツコツと努力を積み重ね、この厚みある体を作りました。
結局、「コツコツ」が一番強いと、八女の里は証明してくれるでしょう。
「努力に勝る天才なし。」
今日まで歩いてきた道に間違いはありません。花開く時までこのまま貫いてください。
若清 里田中
次の大阪場所で入門から丸一年です。
若清、里田中ともに高身長で肩幅もあり手も長く、スケールの大きな相撲がとれる力士に育つことを、親方は期待しています。
二人とも、世の中にこんなに真面目な子がいるのかと驚くほどに至誠で、暴言なども一切吐かない誰に対しても真撃な対応が出来る素直な性格です。
親方の言葉の吸収も早く、すくすくと成長しています。
若新はもうすぐ入門5年となりますが、ここにきて、ようやく自分を持ち始めました。いつも誰かの陰に隠れてなかなか前に出ない性格でしたが、人が変わる切っ掛けは、いつやってくるか誰にも、本人ですら分かりません。
入門当初から、人には無い才能のある子だと親方も私も感じていて、ずっと信じてその時を待っていました。
怪我をした際や、病気になった際、大切な人を失った際、切っ掛けは人それぞれですが、"このまま終わるわけにはいかない。" と自分で気づいた時がその子の本当のスタート地点です。
それが入門から何年経ってからでも、何歳であっても、ここから大きく成長出来るということを、今、若新は頑張っている真っ最中です。
なりたい自分が見つかりました。
そのために何をすれば良いのか、20歳になったことで自分を見つめ直していこうと、もう一度気合いを入れ直しています。折れる日もありますが、周りはそれでも見守りますので、一緒に頑張りましょう。
今日一番乗っていたのは若大根原です。
イキイキと元気いっぱいでした。
昨夜は日曜日で部屋の稽古はお休みでしたが、夜稽古場で、倉庫から道具を出し、ベンチプレスをしていました。
「手術した箇所は鍛えて強くする。」
親方がいつも皆んなにそう言っていますので、前向きに、自分で工夫をし、淡々と自主トレに励む若大根原の姿は、見ていてとても清々しいものでした。
日に日に筋肉質になっていく様が、昔大相撲で活躍した憧れの力士に、一歩でも近づこうとしていることを物語っています。先人のしてきた事、言葉に憧れを抱く事は自分に大きな希望を与えてくれます。
自身の個性を存分に生かし、これからもスピード感溢れるワクワクする相撲で皆を楽しませてください。
兄若田中の回転の効いた突っ張りが、弟里田中に遠慮なく大きな音を立てて入ります。
若田中の相撲は西岩部屋の力士の中でも特異で、面白いセンスを持っています。
親方も、基本が大切であることをじっくり教えながらも、優霧は優霧らしく自由にと、良い意味で奔放に育てているところがあります。
賢い子ですので、これから早いスピードでどんどん相撲も覚えていくことでしょう。良いところは伸ばし、良くないところは自分で修正していく力があると信じています。
日頃の自主トレで、何十分も同じ動きを確かめ、基礎の摺り足を熱心に繰り返している里田中。
足腰がとても強く、下がらず必死に堪えます。
反撃なるか。
お互いの持ち味を思いきり出し切って、いつも良い稽古をしています。
兄がいるから弟は強くしてもらえます。
いつも感謝の気持ちを忘れず、お互いを尊重し、仲良く支え合い、揃ってますます強くなってください。
兄弟揃って力士という道を選んだ事は、決してありふれた事ではありません。
相撲が大好きなご両親、ご祖母様は、二人が生まれたての赤ちゃんの頃には、今の力士である姿はまだ想像されていなかったことでしょう。夢のような現実に心から喜んでいらっしゃる事と思います。
大阪場所は尼崎からきっと観に来てくださいますね。プレッシャーを励みに変えて、それぞれ自分らしく精一杯戦いましょう。
八女の里 里田中
透輝の里
入門から5年。
力をつけ、稽古場では負けることがほぼありません。自身の立場もよく理解し始めています。
兄弟子として、部屋頭として、弟弟子たちに稽古場で頻繁に声掛けをするようになりました。
「もっとこう、」
「さっきのあれは、ここをこう、」
など小声で身振り手振りを加えて教える姿がこの日だけでも多く見られました。
兄弟子は一人で強くならないこと。弟弟子を強くしてあげることも兄弟子の役目なんだよ。と親方は透輝の里によく伝えていました。今、自然と実践できている姿を見て大変頼もしく思います。
兄弟子としての厳しさと優しさを、バランスよく出せているのが透輝の里の素晴らしいところです。相手の為を思っていないとそのバランスの調和は取れません。時に厳しく、時に優しく、皆んなのことを本当の弟のように面倒を見てくれている心温かい性格の持ち主です。
最後は、恒例の若田中の股割りです。
三人がかりで見守ります。
「ぎゃーーー!!
いててててててて!!」
よほど痛かったのか、ヒーヒー言いながら、内腿をずっとトントントントン高速で叩いていました。
今日も一日、お疲れ様でした!!