西岩部屋おかみさんブログ

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若大根原、若金子、若田中、若箭原の同期4人が、この春、兄弟子になりました

花散らしの雨。
寂しい気持ちもありますが、次の春に向かって、また稽古を頑張りましょう。



春の雨の日にふと思い出す、3年前、まだ若大根原、若金子、若田中、若箭原の同期4人が入門して間もない頃の出来事を今日はお伝えいたします。


若田中、若金子、若箭原、若大根原


若大根原、若田中、若金子、若箭原






4人仲良く相撲教習所に通う毎日。
カランコロンと下駄を鳴らして部屋を出発、
蔵前駅から電車に乗ります。

天気予報は一日通して曇りでしたが、出掛けの際に、

「雨が降ったら連絡してくださいね。」

とだけ伝えていました。



天気予報が外れてしまい、雨が降り出しました。
連絡はありません。
まだ授業をしているかもしれないし、連絡が来るまでもう少し待とうと思っていましたら、

「ピンポーン」と部屋のチャイムが鳴りました。
「お疲れ様でございます。
ただ今、教習所から戻りました。」


濡れている様子はありません。
どうやって帰ってきたの?迎えに行こうと思っていたのに、と驚くと、4人とも元気な声で、

「コンビニで傘を買いました。」

とのこと。



よく話をききますと、
雨が降ったら連絡して欲しいと言われていたことは、全員憶えていたのですが、迷惑を掛けてはいけないと気をまわしてくれて、自分たちで何とかしようと傘を購入したそうです。


私の言葉不足でした、、、。
新弟子さんたちに余計なお金を使わせてしまってどうしよう、、、。


こちらはこちらで、
迎えに行こうと思っているから万が一雨が降っても傘は買わなくていいよ。皆んなまだお給金も溜まっていないのに余計なお金は使わなくていいよ、それに傘を買うと部屋に傘が増えてしまうし、とそこまで伝えなかったこと。

新弟子さんたちは新弟子さんたちで、
天気予報を見て傘は要らないと判断したとはいえ、自分たちがもしもの準備をしていなかったことで、おかみさんに頼ることはできない。わざわざ連絡してどうにかしてもらうのではなく、自分たちで何とかしようと相談して判断したこと。

お互いに相手のことを考えているのですが、行き違ってしまいました。



コンビニで購入したピカピカのビニール傘は、1本700円!! 
ああ、勿体ない、、、。
親方に報告し、親方も「新弟子は気を遣って余計なお金を使うものではないよ」とのことでしたので、4人には、部屋のお金から700円ずつ袋に入れて渡し、

「これから、お金をたくさん貯めてください。それもお相撲さんにとって大切な勉強だから。」

という話をしました。


そして、部屋には傘が余分に4本増えてしまいました。
さあ、どうしましょう。

「いざという時の予備として、部屋で管理しておきますので、使わないビニール傘4本、あとで持って来てください。」
と伝えました。

やってしまった、申し訳ない、という表情で

「すみません、、、」

と元気なく謝る新弟子さんたち。
わあ!どうしよう!何か言わないと、とこちらも焦り、

「いいよいいよ、お客様に使って頂いてもいいしね!」

と深く考えずにそう言ってしまったのですが、その最後の一言がまた彼らを悩ます事になりました。

大部屋に降りて、しばらくして傘を4本皆んなで持って来てくれました。

「これがもう使わない傘ですね。
傘立てに何本も立てているのは見ばえも良くないし、こちらで引き取りますね。」

と受け取りますと、どの傘を見ましても、真っさらに近い様子です。

理由を訊きますと、お客様に使って頂くかも知れない傘だから、今日買った綺麗な方を持って来ました、と。



どこまでも謙虚に謙虚に考えてくれている事に、15歳〜17歳の若い4人が、こうしようああしようと自分たちなりに一生懸命考えた答えは、どれも間違いなんかではなく、むしろ思いやりに溢れていて、この子たちは考える力をしっかり持っていて素晴らしいなと感動しました。





西岩部屋では、新弟子さんたちは最初はビニール傘を使用し、1、2ヶ月経ちましたら、親方が骨の強い紺色の大きなサイズの傘を注文し、一人一人に渡します。
今では彼らも紺色の傘を使用していますが、春に雨が降りますと、入門したばかりの4人のこの出来事を思い出し、初々しさを懐かしみます。

同期でなんでも相談し合い、切磋琢磨し、いつかは蛇の目傘や番傘を差すかっこいいお相撲さんになってください。



若金子、若箭原、若田中、若大根原



皆んな、きっといい兄弟子になります。