西岩部屋おかみさんブログ

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2021/11/30 秋の終わり

秋の終わりを告げる泡黄金菊が、冷たい風に花びらを落とします。

11月30日
九州場所後にまた気持ちよく過ごせますようにと、お手入れのために入れ替えをお願いしていましたお相撲さんたちのお布団が、トラックで届きました。
お日様の光を浴びながら台車にドスンッと次々と運ばれていくお布団は、ふかふかでとても気持ちよさそうです。

部屋の前で作業をしていましたら、丁度親方とお相撲さんたちが帰ってまいりました。
一年納めの九州場所も無事に終わり、皆の元気な顔を見られまして一安心です。
九州場所でお世話になりました皆様、温かい応援を賜りました皆様に、心より御礼申し上げます。





九州場所 八女の里編】

地元福岡に、自己最高位で帰ることを決めていました。
9月場所は部屋でただ一人勝ち越して、九州場所は自分への挑戦の場所となりました。
自己最高位で帰るということは、その九州の土俵ではさらに上を目指す挑戦者ですので、苦戦が強いられます。

九州場所で家族や地元で応援してくださる皆様に良いところを見ていただくというのはどういうことなのか。

先場所の9月場所で大きく番付を下げてしまっていれば今場所の九州で勝ち越しを目指しやすい、勝つところを多く見てもらえるかも知れない。
そんなことを思う力士はいません。
やはり勝って地元に帰りたい。
『今までで一番強くなって帰りたい。』
それを実行した八女の里。
今場所苦戦しましたが、歯を食いしばってまた立ち上がる、勝てない、でもまた立ち上がる。勝ち越しには至りませんでしたが、その姿こそが一番輝いているのです。
ご両親に良い姿を見せることができました。

場所後には久しぶりに帰省の申し出がありました。部屋では年長者として皆を正しい方向に導き、リーダーシップを発揮してくれています。
「心身ともにリフレッシュしてきてください。」と伝えますと、

返事は
「ありがとうございます。
分かりました。
親孝行をしてきます。」
でした。

お父様お母様は、一年に一度会えるか会えないかの息子の顔を見るだけで幸せでしょうね。



九州場所 透輝の里編】
透輝の里の原動力はいつも「気持ち」です。
どんなことにも気持ちを込めることが出来る子です。
今場所は毎日12時開場ということで、自身の取組時間によりましては、お客様が入られた会場で土俵に上がる日もありました。
気合いも入り緊張感も増し、控えに腰を下ろしていますときもいつも以上に背筋が伸びていました。やはり若いお相撲さんたちにとりましても、お客様の存在が大きな支え、励みになっていますことを心より感じます。

先場所、国技館にご来場のお客様より、部屋に一通のメールを頂きました。
内容はこうでした。
その方は、国技館へ朝早くから足を運び若いお相撲さんたちの取組をご観戦されていたそうです。そして花道近くにて"勝った力士皆へ"拍手を送られていました。
その日、勝ち星を挙げた透輝の里。
花道を下がる際、拍手を頂き、自分への拍手だと気付き、そちらを見て、目礼をしたとのことでした。
その方は、目礼でお返しがあることを想像しておらず、とても嬉しい気持ちになったことを綴られていました。結びは「お陰で、今日の観戦が記憶に残る素敵な一日となりました。」という温かなメールでした。
透輝の里を和室に呼び、いろんな話をしましたあとに。「それと、松永くんに今日一番伝えたいことがあります。」とそのことを伝えますと、本人もその場面を覚えていて、その方のお顔もしっかりわかりますとのことでした。
"お顔もしっかりわかります。"
その一言に、透輝の里らしさを感じました。
透輝の里は、私たちに対しましても、ただお辞儀をするということは今までも一度もありませんでした。いつも誰に対して何にありがとうなのか、自分の中に一度気持ちを入れてから挨拶をしてくれます。
ですから、必ず目が合うのです。
相手の「顔」を見ているということ。だからこそ、覚えているのです。
あなたの真っ直ぐな心によって、その日の相撲観戦を素敵な気持ちで過ごせた方がいる。
そのことをいつも心に留めて、これからも目の前の一人一人を大切に出来るお相撲さんとして、日々頑張ってください。


(次回は若藤岡編からです。)




娘も、皆が九州から帰ってきます前の日からそわそわしていました。
4歳の娘にとりまして、父親に会えない3週間はとても長く感じましたようで、日めくりカウントダウンカレンダーを作り、朝起きる毎に、1枚1枚めくっていました。
運動会の日は、ほとんどの周りのお友達がお父さんと一緒に「でかパンリレー」に挑む中、寂しさを漏らすと思いきや、「お相撲さんたちも1位になるために頑張ってるから、自分も今日はママと走って1位になりたい。」と一生懸命走りました。


パパに会い、泣いていました。
一生懸命速く走って頑張ったけど、1位になれなかったことを報告していました。
一生懸命走ったならそれで良し。

みんな頑張りました!