やっと開催されました大切な場所です。何が何でも千秋楽まで自分の相撲に集中し、我慢や努力から得た新しい自分を土俵上で精一杯表現して欲しいと願っています。
7月場所3日目の夜、「全部負けたっていいんだ。まだ相撲を知らないんだから。とにかく一生懸命当たって押す。」そのような言葉を親方から掛けられていた若箭原（大阪府摂津市出身15歳）。3月に入門したばかりの新弟子です。
3月場所の前相撲では勝ち星はありませんでした。相撲未経験です。「何も気にすることはない。」親方は笑顔でそう言葉を掛け続けていました。
そして昨日、7月場所4日目、若箭原が初めての白星を挙げました。
この一番は親方と車の中で観ていました。停車させ、共に一つの画面を観て応援しました。
「勝った！！」思わず声が出た一番でした。
親方は、その一番を見届けてから国技館へ出発。私は部屋で若箭原の帰りを待ちました。
記念に一枚撮らせていただきました。場所が始まる数日前、初めて髪に油も付け、よりお相撲さんらしくなった姿を、どうしても親御様にご報告したかったからです。
元気にしています。
本人の許可を得て書きます。
若箭原は今、携帯電話を持っていません。5月中旬に突然動かなくなってしまったのです。報告を受け、ショップに問い合わせ、いろいろと教えていただき、あれもこれもと試してみましたが動きません。あとはApple Storeに行って、見ていただくしかないとのことでした。
実家の大阪で、親御様に新しく手続きしていただき送っていただくという方法が一番早いのですが、西岩部屋では、入門した以上、15歳でも自分のことは自分のお金で自分でする。これが基本です。
どんな契約や申請も、親代わりであります親方や私は付いていくだけです。とにかく自分でやってみること。委任状が必要であれば委任状だけは親御様にお願いする。今までも皆んなそうしてまいりました。
しかしながら、「不要不急の外出は禁止」。これが今の決まりです。携帯電話の故障は不要不急ですので、故障から2ヶ月、未だApple Storeに行けておりません。
このコロナ禍で、部屋から一歩も出られない生活の中、携帯電話が無い2ヶ月がどれほど辛いものか。
それでも、若箭原は親方の話をよく理解し、むしろ今が自分が変われるチャンスなんだと前向きに捉え、日々の生活を頑張ってまいりました。その様子は「健気」の一言です。
どうやって過ごしているのか訊きますと、以前はよく携帯でゲームをしていましたが、今は本を読んだり同期や皆さんと喋っている時間が楽しいですとのことでした。
癒し系でほんわかとしている子に見えていましたが、今回の携帯電話のことや、そのほかにも最近では部屋のことで一人一人に意見を求めました際、若箭原は澱みなく真っ直ぐこちらを見て自分の意思を伝えてくれました。厳しい一面もしっかりと持っていて、きちんとした子だなと感心いたしました。
もう少しの間我慢して、外出禁止が解除されましたらApple Storeに行きましょう。最新の機種にはお金が届かないかも知れませんが、今は今で身の丈に合ったものを選びましょう。それがまた勉強になります。
携帯が故障したことは不運でしたが、それにより得たものは、今後の若箭原の土台となることでしょう。
我慢の先には必ず成長があります。
今日の相撲も頑張ってください。
本日大相撲7月場所5日目、
この後8時45分ごろより序ノ口の取組で、若箭原、若大根原、若田中と、3名の新弟子の出番が続きます。
八女の里の取組は10時50分ごろです。
