蔵前4丁目で130年続く『菓匠 榮久堂』さん。
こどもの日に用意できなかったことを気にしていた親方が、ふと立ち寄ろうと車を停めました。店の外のあおい葉が雨粒を元気に弾いています。
貼り紙を読みますと、先のお客様がお会計を終えるまでは店内には入れません。その間、葉に落ちる雨音を愉しませていただきました。
奥様がその様子に気付いてくださったのでしょう。
順番が来て中に入りますと、
「かしわの葉は、冬になっても落ちないんですよ。翌年新芽が出るまでは古い葉は落ちない。かしわは『強い』を意味する葉なんです。」
ご主人がそう教えてくださいました。
「あともう少しお待ちください。」
蒸し立てのかしわ餅が冷めるのを待ちます。奥から運ばれてきたかしわ餅はとても良い匂いです。丁寧にかしわの葉が巻かれます。
「餅が熱いと葉がくっ付いてしまうから。どうもお待たせいたしました。」
帰り際、奥様に、葉っぱの写真を一枚撮らせてくださいとお願いしましたところ、快く、どうぞと微笑んでくださいました。
お相撲さんたちに、今はいろんな事をしっかり伝えなければいけません。
親方と考え、この日は、『葉っぱのフレディ』という絵本を朗読することにしました。
大きな男の子たちに絵本なんて笑われてしまうのでは、、、と悩みましたが、直接的な言葉よりも、すっと心に届き、物語を最後まで聴いた後、この子たちなら自分なりの考えを持ってくれるのではないかと思い、選びました。
親方と結婚した頃に、我が子にいつか読んであげたいと夢を膨らませ、本屋さんに買いに行きましたのがもう16年前。大切にとっていた一冊です。