西岩部屋おかみさんブログ

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2020/04/24 16年

結婚記念日でした。

外出自粛の中、思い掛けず嬉しいプレゼントがありました。夜、自宅階のインターホンが鳴り、玄関には、正装したお相撲さんたちが並んでいます。
正装と申しましても、この事態ですので床山さんではなく自分で整えた頭はそれぞれに崩れています。それでも、彼らなりの正装にとても嬉しい気持ちになりました。

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「結婚記念日おめでとうございます」
先頭の若龍星が声を張ってそう言ってくれました。
こんな時にでも覚えていてくれたことに目頭が熱くなりました。
しばし談笑し、親方が「はい、もう皆んな下降りて寝ろ」と切り上げようといたしますと、


「あ、あの、、、自分から親方とおかみさんにお話があります。」
そう口火を切ったのは若松永でした。

若松永の話の内容は、日々の厳しい指導への感謝の言葉でした。
兄弟子、弟弟子、皆んながいる前で、親方をしっかり見つめ、大きな声で話し始めました。
「今回自分の指導のために、毎日家族の時間まで奪ってしまってすみませんでした。有難うございました。」と頭を下げてくれました。

実は若松永は、先日『課題』を乗り越えたところでした。
今回はたまたま若松永でしたが、若松永だけに限らず、部屋では日々様々な問題が起こりますので場合によりましては課題を与えることがあります。

頭ごなしに怒るのは簡単ですが、それでは何も変わりません。
"何事も『指導には罰』であってはいけない。罰ではなくなにか身になる、その子に合った課題を課そう。乗り切れるまで、親方も私も本人に寄り添っていこう。"
そう信念はありましたが、正解も不正解もない指導法です。その子が乗り切りそれが改心に繋がるかどうかも分かりません。
厳しく見守り続けました。
若松永は、一切の弱音を吐きませんでした。

そしてお礼の言葉をプレゼントしてくれました。
こんな事は今までありませんでした。

今は苦しさしかなく、5年、10年と経ってようやく"ああ、あの時の厳しさは、、、"と、解る日が来る。
そうであって欲しい。
こちらとしましては、そのくらいの気持ちでした。
まだ17歳の若松永が、こちらの厳しさの意味を理解してくれたことに、大変驚きました。

自分を見つめ直し、修正し、成長する力を持っていること。
相手の気持ちを理解する力を持っていること。
若松永の心の逞しさに、親方も大変驚いています。

その成長を見せてくれた事。その後、親方と「嬉しいね」と言い合えた事が、今日という日を温かい一日にしてくれました。
本当にどうもありがとう。


最後に。
時間を奪われたなんて思っていません。
私たちにとっても、かけがえのない時間でした。
きっと若松永は、失敗した子を正しく励ませる兄弟子になります。