恒例の全員写真です。
入門から2年あまり。こうして見ますと、体もがっちりと逞しくなり、風格も出てまいりました。
つい2、3日前、「わぁ、また体が大きくなりましたね」と本人に声を掛けつつ、努力して体づくりをしているんだなと涙が出そうになりました。
10キロ以上体重が減り親御様を心配させた時期もありました。
「今はいらない脂肪が削ぎ落とされている時期だそうです。ここから力士の体になっていきますので大丈夫です。」と親方に代わって福岡の御両親へお伝えしましたり。ふとそんな事を思い出しました。
何が書かれていますかを確認し、
満面の笑みを見せてくれました。
新型コロナウィルスが収束したら、ここに書いてある一式をプレゼントする、という、親方直筆の目録です。
八女の里 晃 （本名 : 中谷 晃）
福岡県八女郡広川町出身です。
八女茶の産地として名高く、郷土に愛される力士になってほしいとの想いで、親方は迷わず八女の里と名付けました。
入門当初は、本当におとなしく、みんなの輪の中に入っていけるかなと心配になる程でしたが、そこがまた彼の良さでもありました。聞き手にまわり常に穏やかな微笑みで仲間の話に耳を傾け、いつも輪の中にいます。
居心地良さそうに生活していますのが見て取れました。
そして、八女の里の特長といえば、とにかく指導者に遵従し、忠誠を誓う気持ちが強いことです。
西岩部屋は新しい部屋ということもあり、創設当初、まだみんなが師弟関係自体あまり理解していない頃、様々な小さな問題がありました。
門限を過ぎていても部屋の向かいにある自動販売機にジュースを買いに出かけてしまったり、部屋にはエレベーターがありますが、力士は階段のみと伝えましても見ていないところでエレベーターに乗っていたり。
まだ幼い子たちに規則を理解してもらうことは、最初はまず規則を守る意味から教えていかなくてはならず、大変でした。
そんな中、八女の里は、いつも規則を守っていました。
「中谷くんはいつも親方が言ったことを必ず守ってくれていますね。どうして？」と訊ねましたら、
「石井先生から言われました。西岩部屋に入門したら、西岩親方の言うことを全部ききなさいと教えられました。」
石井先生とは、八女の里の恩師です。
恩師の言葉を忠実に守っているのです。
それはのちに、師匠自身への忠誠心へと繋がりました。
"中谷くんは親方の言葉をほんとによく聞いている。
こちらも発言に責任持たないといけない。"
こんな会話を私は親方と何度したかわかりません。
例を出しますと、場所後の休暇中、お昼はいつも通りちゃんこ番がちゃんこを作り皆んなでいただきますが、夜に関しましてはちゃんこ番の負担を減らすために、ちゃんこはありません。
皆んなはこの機会にと浅草を散策しながら外食を楽しんだりするのですが、八女の里は、部屋に残って、ご飯に冷たくなったお昼の残りちゃんこをかけて掻き込むように食べていました。
「普段食べられないものとか、外に食べに行っていいのですよ」と声を掛けますと、「はい」とだけ応えます。
またある時も、同じような光景が見られましたので、「どうしていつも、残りちゃんこを食べているの？」と訊ねますと、「部屋のちゃんこが一番栄養があると親方が前に言っていましたので。」とのこと。
私は急いで親方の元へ行き、一部始終を話しました。
部屋の規則が変わり、休暇中でも残りちゃんこを温める時のみ、ちゃんこ番立ち合いのもと、ガスを使うことが許されました。
温かいちゃんこをご飯にかけ、質良く体重を増やすために、八女の里は休暇中も休まず食べる努力を続けています。
これは、携帯電話のメモ機能に残っていました八女の里の体重記録です。
体質的に他の力士よりも体重が増えにくいため、毎日記録して意識しましょうと、数ヶ月間体重の報告をお願いしていました。
昨年の9月の報告を纏めたものです。
トレーニングでもよく体を動かしています。どうしてもエネルギーを消費してしまうのでしょう。
それでも、この記録を見ていますと、"報告するから少しでもたくさん食べて体重を増やそう"としている様子が伝わります。
特別はしゃがない、
特別目立つこともしない、
だからこそ長く一緒に生活すると、こういう子こそが光って見えます。
無事二十歳になりました。
これからも持ち前の「我慢強さ」と「流されない心」を武器に、八女の里らしく成長してください。
必ず夢を叶えましょう。
お誕生日おめでとうございます。
