西岩部屋おかみさんブログ

大相撲西岩部屋の備忘録として利用しています。【公式twitter】https://twitter.com/nishiiwabeyaです。

若佐竹と若野口

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9月場所前、
親方が若佐竹と若野口に、御使いを頼みました。
番付表と西岩部屋新聞を持って「今場所もよろしくお願いいたします」と町内の方々へ御挨拶です。


【若佐竹】
9月場所初日、鮮やかな一本背負いが決まった若佐竹。この夏、自身で8キロもの体重増量を成功させたことで逞しさが増しました。
(写真は日本相撲協会公式Twitterより拝借いたしました)
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若佐竹は御近所の皆様からとても人気があります。
どこでどうお知り合いになりましたのか、親方も私も知らないうちに皆様に可愛がっていただいているようです。
ちょっと部屋を出てお豆腐などを買いに行きましても、あちらこちらで「若佐竹がこの前話しかけてきてくれて嬉しかったわ。元気?あの子、今度何枚目?」などとお声掛けいただきます。
聞けば、犬のお散歩をしている方、夕方打ち水をされている方、いろんな方に「こんにちは」と若佐竹の方から挨拶をしているようなのです。
人懐っこく礼儀正しい若佐竹の性格は、下町浅草によく合っていると思います。
心と心を通わせ、自然な触れ合いができる子です。

そして、ユーモアもたっぷりです。
紙に日付けを記入する際、2018年と書くところを、21...とペンを走らせ、間髪入れずに「あぶねー!未来行ってしまうところやった!」と大きな声で独り言を言い、ばたばたしながら1を0に書き直していました。

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「いいから早く書きなさい」と呆れ顔で笑う親方。周りで弟弟子たちも笑います。

また別の日には、冷蔵庫のドアを開けたときに少し肩に当たっただけですのに、大袈裟に「うわぁ」と倒れる仕草を一人でしていました。
遠くで見ていましても吹き出してしまうほど楽しいです。若佐竹の笑いで一日の疲れが吹き飛びます。
いつも幸せな空気を作ってくれてありがとう。

蛇足ですが、、、個人的なことも付け足しますと。
若佐竹の作る玉子焼きは絶品です。
先日、ちゃんこ番だった若佐竹が部屋の味(親方の好きな甘い玉子焼き)ともう一つ、「こっちは関西風です」と綺麗に形良く巻いた玉子焼きを手渡してくれました。
私は大きく切り分けられた一切れを一気に口へ運び、じっくりと味わいました。
懐かしくて泣きそうになりました。
じゅわっと広がる塩っぱい味付け、、、。何年振りにいただいたでしょう。甘くない玉子焼きは自分でももう作ることはなくなっていました。
これが関西の玉子焼きです。ありがとう、故郷の味でした。とても美味しかったです。



【若野口】
親方と夏巡業を共にしました。
(写真は日本相撲協会公式Twitterより拝借いたしました)
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一ヶ月間、孤独を感じる日もあったと思います。

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学生時代、全く相撲とは無縁だった少年が入門から一年でこれだけ成長するのかと親方も日々驚いています。
本日9月場所4日目、まだ白星はありませんが、若野口には基礎を大切にじっくり真っ直ぐに相撲を覚えて伸びていってほしいという親方の強い想いがあります。
体つきもどことなく若の里に似てまいりました。
今場所も千秋楽まで怪我なく力一杯、親方から教えられた相撲を取りきってほしいと願います。

先日、若野口の弟弟子である若藤岡からこんな話を聞きました。
若藤岡は9月場所初日に自身より格上の相手との取組が組まれ、不安を抱えていたようです。相手の力士は怪我からの復帰場所です。前日、対戦相手のことを研究すればするほど「怪我をしたらどうしよう」と不安が押し寄せてきたそうです。
若藤岡は兄弟子である若野口に相談しました。

「怪我をしたらどうしようと考えてしまいます」
「何言ってるんだ、お前が怪我を怖がってどうするんだ、相手はもう怪我してるんだよ、それでも復帰して頑張って出てくる。お前は怪我をしていないじゃないか、とにかく怪我を怖がらずに頑張れ。」

そのような内容だったそうです。若藤岡は若野口に相談して"喝"を入れてもらったことで前を向けて臨めたようです。
残念ながら結果は付いて来ませんでした。
「せっかくアドバイスしてもらったのに野口さんに申し訳ないです」
そう言っていました。
そんなことないです。若藤岡は若野口の言葉で心が強くなれました。
自分の相撲を取りきる。怪我を怖がらない。
それができた事はこれからの自信にも繋がりますし大きな財産となります。若野口に感謝だねと言うと、大きな声で「はい!」と言っていました。

部屋で起こる出来事、いろんな場面を思い返してみましても、若野口は非常に情の深い子です。自分だけ良ければそれで良いではなく、「これはこうするんだよ」と部屋の仕事が分からなくて困っている弟弟子に教えている姿をよく目にします。
今回も、兄弟子として弟弟子を優しい言葉で強くしてくれました。
若藤岡へのアドバイスは、親方がそうであって欲しいと願う兄弟子の行動です。どうもありがとう。
この夏、西岩部屋で一人だけお盆休みがなかった若野口。親方も「若野口は夏巡業でよく頑張った。場所後は帰してあげたい。」と言っています。
帰省を励みに、千秋楽まで一生懸命頑張ってください。



若佐竹は一年、
若野口は半年、
内弟子として田子ノ浦部屋さんでお世話になりました。兄弟子が多くいる部屋、お客様がたくさんいらっしゃる部屋がいかに厳しく大変かも勉強させていただきました。その経験が今、西岩部屋で活きています。
田子ノ浦親方、おかみさん、兄弟子の皆様や裏方さんの先輩方によく教育していただき感謝しかございません。

手前味噌ではございますが、今、西岩部屋で弟弟子たちが正しい方向へ向かっていけているのは、若佐竹、若野口がしっかりしているお陰です。
一年前、9月2日に撮った写真です。
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心も体も成長しています。

まだまだ若い西岩部屋。
部屋の規則も、「最初はこう言ったけど、やってみてうまくいかなかった、今日からこう変えましょう」と変更もしょっちゅうです。時に皆んなを迷わせてしまっていることを申し訳なく思います。
決まり過ぎていないことを、『この部屋は全てが新しい、全てが新鮮』と捉えてくれると嬉しいです。

親方、おかみさんもがんばります。
そして大部屋では、若佐竹と若野口、あなたたちの行動が、道しるべになります。
これからもよろしくお願いします。