6月4日 若佐竹が20歳になりました

6月4日
初夏の日差しに爽やかな風が吹く、とても気持ちの良いお天気でした。

この日、若佐竹が二十歳を迎えました。
7人みんな10代だった西岩部屋から一番最初に20代になりました。

一番弟子の若佐竹。
西岩部屋の部屋頭です。

親方や私には入れない、子どもたちだけの関係性。
それを作ってくれているのは一番弟子である若佐竹だと思うのです。

若佐竹は一番弟子、部屋頭、年齢も一番上ということで、みんなの代表として親方から厳しく注意を受けることもしょっちゅうです。
なぜ自分だけ？と悔しい想いをすることもあるでしょう。


ですが、親方はちゃんと知っています。
本当に人間味があり良いところをいっぱい持っています。

大阪での出来事です。
新弟子3人が自由時間に何をどうしていいか分からず、それぞれポツンポツンと離れて座り、携帯電話でゲームをしていました。
若佐竹はひとり自転車を走らせ買い物へ。
自分のお金で卓上ゲームを買ってきました。

後になって理由を知りました。
「携帯ばっかり触っているより皆んなで何か遊べる物はないかなと思って」

若佐竹が一番弟子でよかったなと思いました。

5月場所後の休暇もまたそのゲームで皆んなで遊んだそうです。若松永が笑顔で教えてくれました。




最近では、こんな話もございます。
そろそろ3月入門の3人、若藤岡、若松永、若中谷が頭に油をつけてもいい頃ではないかと親方が話した翌日、3人は両国に櫛を買いに行ってきたそうです。
若藤岡に、「油は買わなかったの？」と訊ねると「最初だから、と油は佐竹さんが3人分買ってくれました」と。
親方も驚いておりました。

親方の目の前で良い事をするというよりも、むしろわからないところで後輩の面倒をしっかりと見てくれる子です。




若佐竹はふた場所連続で5勝2敗の成績でした。
来場所また番付が上がり、自己最高位の序二段51枚目を更新致します。
5月場所後、熱を出し体調を崩しました。
ほっとして溜め込んでいた疲れが一気に出たのかも知れません。

人一倍 繊細で、
人一倍 人の態度や言葉を気にし過ぎる所があり、
人一倍 考え込みます。

だからこそ、
人一倍 だれかの細かな変化に気付けます。
人一倍 みんなに優しい気遣いのできる子です。
人一倍 自分のために考え抜く集中力のある子です。



二十歳のお誕生日を迎えましたことで、お母様からご連絡をいただきました。
我が子を想う長い文章の一番最後には、「来年、会えるのが楽しみです。」とありました。
その一文に、お母様の遠く大阪から見守ってくださる厳しく優しい覚悟が伺え、私は涙を堪えられませんでした。

大事な大事な御子息様をお預かりさせていただいています。
一年に一度しか帰らないと決めている若佐竹。
親孝行するために力士になると西岩部屋へ来た若佐竹。
ご家族の待つ大阪場所までまだまだありますが、勝ち越して最高の形で20代の始まりを迎えた若佐竹が、いつも穏やかに暮らせる環境を整え、日々鍛錬を積んで逞しく成長し、また笑顔で大阪に里帰りできますよう、親方と精一杯努めてまいりたいと思います。

少年のように明るく無邪気なところはそのままに、これから大人の力士として20代を満喫してください。

おめでとうございます。

親方とはじめての乾杯。