西岩部屋おかみさんブログ

大相撲西岩部屋の備忘録として利用しています。【公式twitter】https://twitter.com/nishiiwabeyaです。

2021/11/04.5 地方場所前の大掃除

温かな日差しが眩しい朝、
本日から二日間かけまして、九州場所前の大掃除です。
親方が、前回は誰と誰がどこの掃除を担当、前々回は、と記録していますノートを開き、今回の班決めを行います。

一日目は水回りです。
八女の里と若金子がお風呂場を担当いたします。

八女の里と若金子は、こちらがお願いしましたお仕事以上のことを、黙ってしてくれる子たちです。「おかみさん、ここもしておきました。」とは言いません。
彼らの細かい頑張りを見落とさず、ありがとうを一つでも多く言えますように。

やはり今回も、"あ、ここもしてくれている"と思うところがたくさんありました。
掃除が終わりましたあと、お風呂場の床掃除用のブラシの中に詰まった埃や髪の毛まで綺麗に取り除いてくれていたこと。
引き戸のレールのところにうっすら溜まった水を雑巾で吸い取りながら拭き上げて一滴たりとも水気を残さないようにしてくれていたこと。
そのほかにもいろいろと。
二人で黙々と、掃除後の掃除までも頑張ってくれました。
ありがとう。



若藤岡と若田中は、
トイレと脱衣場を担当です。

若藤岡は掃除が上手です。
トイレ掃除は部品を外して隅々まで汚れを取るため、かなり大変なのですが、力を入れて一生懸命擦り、おでこに汗をびっしりと掻いて取り組んでいました。真面目に一生懸命掃除をする姿にいつも誠実さを感じます。

心優さを感じる場面もありました。
洗面所に立つ若藤岡の真横に近寄り、雑巾を洗おうと蛇口に手をかけようとしますと、「あっ」と、片方の手で私の手を遮るように、そしてもう片方の手で給湯器の温度をピピピピピ...と急いで下げてくれました。
訊けば若藤岡は汚れを早く取るために熱湯を使って掃除をしていたそうです。このままでは私が熱いお湯に驚くと思ったのでしょう。
「今熱いです。」と言葉で伝えるのではなく、咄嗟に手で庇ってくれましたところに、若藤岡らしさを感じました。

若田中はどんな時でも元気いっぱい。
「よいしょ!よいしょ!」、「よし!オッケー!」などとよく動き、皆んなに活気を与えてくれていました。

長い手足は、どんな時でも大活躍です。


透輝の里と若大根原と若箭原は、ちゃんこ場です。

グリルを手を汚しながら隅々まで掃除します。




大阪出身の透輝の里と若箭原の会話は、まるで漫才のよう。終始笑顔で掃除を進めていました。
しんどいことを楽しく進めるのは、心持ち次第。
明るい空気が流れていてとてもよかったです。

若大根原も、二人の会話にニコニコと笑顔で参戦。

引き戸がうまくはまらないというだけでワイワイと大騒ぎ。賑やかで何よりです。



最後は親方が確認いたします。


一日目終了です。



二日目、
朝一で、ゴミをためるポリバケツを水洗いして、中も外も綺麗に汚れを落としてくれていました。

大部屋は、何やら苦戦している様子です。
フィルターを外しましたものの、今度は元の状態に戻すのに一苦労。
この夏から大部屋に加わりました業務用の新しいクーラーで、今までのクーラーとは勝手が違うようです。

それでもせっせと頑張る若箭原。本体に貼ってあります小さな字の説明をよく読み、慎重に取り付けてくれていました。

若干16歳です。
相撲部屋に来ましたら、お相撲さんたちだけで何でもしなくてはいけません。
一つ一つ皆んなで知恵を出し合って、何でもできるようになる様子を見ていますと、そこには健気な成長が必ずあります。
大人は今は入らない方がいい。
そのような場面がたくさんあります。



まだまだ取り付けは続きます。


皆んなが集まります。
口々に、
「もっと上じゃない?」
「それ引っ張ってみたら?」
など、皆んなで考えます。
あえて親方は呼びませんでした。



選手交代です。



透輝の里が、八女の里に、壁の汚れをどう取ろうか、と相談しています。
二人の落ち着いた会話を聞いていますと、相撲部屋は多少汚してもよいという場所ではなく、自分たちの住む家なんだという責任感が出てきたな、ととても感心いたしました。

メラニンスポンジで地道に擦ります。


こちらは玄関掃除です。
皆が、土足で歩く場所ですが、しっかり素手で手をつき、一生懸命汚れを落としてくれていました。







最後まで脚立を抑える若箭原。
優しい心遣いです。
思い切り力を入れたら出来そうなのに、考え込む若田中。どうしたの?と訊きますと、「無理矢理力を入れて壊してしまったら大変ですので。」と、慎重に慎重に取り付けます。
その考えは大事なことだなと感心いたしました。

皆んなのお陰で無事に元通り設置できました。
お疲れ様でした。



扇風機も分解して洗剤で綺麗に洗い、袋を被せまして来年の春までしばし休憩です。



若箭原は、ベランダ掃除の際、室外機までピカピカに磨いてくれました。








自転車も綺麗に拭いてくれていました。
雨に濡れないように稽古場に入れます。


二日間の大掃除、大変お疲れ様でした。

特に成長を感じましたことは、兄弟子が親方の指示よりも先に行動してくれましたことです。
屋上の物干しを全て紐を解いて外したり、これから親方が指示をしようとしていましたことも、たまたま自分の洗濯物を取りに上がった八女の里と透輝の里が二人でもう既に済ませてくれていました。
地方場所前には、何をどうするか、もうしっかりと分かっています。


「言わなくても出来るようになったんだな。」


親方がとても嬉しそうに私にそう言いました。





ちゃんこ場の物を全て九州に送りましたので、お昼ご飯はお弁当です。
この日のお弁当は、うどん弁当と、牛丼特盛!
風邪予防のため、生姜入りの納豆味噌汁も付けました。



掃除は心の修行であり、物への感謝であることを伝え続けてまいりたいと思います。
今しかできないお相撲さんらしい生活を、皆んなで楽しんでください!