西岩部屋おかみさんブログ

大相撲西岩部屋の備忘録として利用しています。【公式twitter】https://twitter.com/nishiiwabeyaです。

2020/07/09 いまを生きる

7月8日
夜中まで、親方とこれからについて話し合いました。

いつものように、21時までには娘を寝かしつけ、21時半には力士たちの消灯の報告を受けます。
そこから、ダイニングテーブルで親方と向かい合わせに座り、領収書の整理をしたりお礼状を書いたり。
今日すべきことをします。
そのあとは、お茶をいれ、力士たち一人一人についてゆっくりと話し合います。

今は『皆んな良い子』
親方の言うことをよくきいてくれます。言われたことを言われた通りに頑張ってくれます。今、特に問題はありません。
ふと、これで良いのかな、と。
自分たちがそれを良しとして育ててきたのですが、この方向のまま突き進んで良いのかどうか。
子どもたちが、いつしか自分たちを恐れて、或いは自分たちに褒められることばかりを意識して、自分を見失ってしまっては本末転倒ではないか。
そうならないためにはどうすればよいか。
「自由に伸び伸びと」
それを伝えるのはとても難しいね、と親方は言います。
ここで、いつも話が行き詰まり、そのまま数日が過ぎていきます。

時に背中を押し、何かに気づかせてくれるのが映画です。7月8日深夜に、親方と2人で『いまを生きる』を観ました。

親方として、おかみさんとして。
自分たちに欠けている部分が、この映画には大いに詰まっていました。
そして、このタイミングで、力士たち、特に西岩部屋立ち上げから共にに西岩部屋をつくってきた兄弟子たちには、自分と照らし合わせて、考えて観て欲しい。

明日、皆んなでこの映画を観よう。
そう決まりました。


7月9日
5月9日に観た「スタンド・バイ・ミー」に続き、2度目の自宅リビングでの映画鑑賞です。

ロビン ウィリアムズ主演
 『いまを生きる』 
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洋画ということもあり、新弟子たちには少し難しいかも知れないとの判断から、親方が大まかなあらすじを皆に伝えます。


舞台は、輝かしい将来を約束された全寮制名門校。
親の期待を背負い、厳しい規律に縛られる寮生活。
敷かれたレールに乗り、青春時代をただやり過ごすだけの若者たちのもとに、一人の新任教師がやって来ます。
その教師は生徒たちに、「自分らしく生きていくとは何か」を、詩を引用しながら教えていきます。生徒たちもまた詩を通して、情熱を燃やすこと、詩は心の糧になること。様々なことを感じ、本当の自分を見つけ出します。

集団生活をしていると、足並みを揃え、同調し、輪を乱さないように行動しようとしてしまいます。
それが良しとされてきましたし、そう教わったのも事実です。悪いことではないのですが、本当は人それぞれに歩き方があり、歩くペース、向かう方向があります。
無理に歩を合わせようとせず、「自分の生き方で好きな方向に人目を気にせず好きな方向に歩け」。
先生は生徒たちにそう語りかけます。
それが立派でも愚かでも。自分の生き方でいまを生きることが素晴らしいことだと教えるのです。


相撲部屋も集団生活です。
厳しい規律を強いています。自分らしく生きるというのは、「規律を破ってもいい」ということではありません。
今自分が置かれている環境の中で、自分の色を出すこと。個性に蓋をせず自分らしく今を楽しむこと。
皆んなには、今の状態から、新しい一歩を踏み出して欲しいと思いました。

特に西岩部屋の兄弟子たち5名は、今ならば、この映画を観ても、「自由とは規則を破ること、反発すること」という答えには繋がらない。
信頼関係が出来たからこそ、ここから先の成長を願って。一度手を緩める、離す、もっともっと子どもたちを信用する。
親方と私にとりましても、愛情とは何か、教育とは何か。深く考えさせられる映画でした。





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ラストシーンは、とても感動的でした。
それぞれの解釈、感想があり、
それが、9名それぞれの価値観です。

力士たちにとりましても、人生を変える一本になることを祈ります。



自分らしく、いまを生きてください。