最後は、傷がつかないよう、慎重に、器具を仕舞います。
ダンベルも、互い違いにして、そっと置きます。
弟弟子も見て習います。
一番最後まで器具の片付けを丁寧に行っていたのが、西岩部屋で一番上の若龍星でした。
道具を大事に扱う。
晴れている日は必ずまわしを干す。
日暮れ前には取り込む。
相撲が強くなりたい子は、周囲の方々への感謝、そして物への感謝も忘れません。
「自分は一番上だから」
この言葉をどういう時に使うかを、若龍星が部屋で一番よく解ってくれています。
今日は、夜、将来、もしも西岩部屋から関取が出た場合、そんなおめでたい夢のある話をしました。
外出自粛生活が始まり、西岩部屋では、2日に1度、夜、自宅階の和室に皆んなで集まり、少しお茶をしながら、時には夜食をいただきながら、親方の話を聞く。こういった時間を設けています。
お題は、親方が皆んなと同じ序二段三段目だった時の話や、普段の行いについてなど。
包丁の名前を勉強したり、着物の畳み方を皆んなで練習することもあります。
全て皆んなで。
西岩部屋はまだ3年目の若い部屋ですので、弟弟子への指導を全てを兄弟子に任せるよりも、兄弟子もおさらいの意味を持ち、全員で学ぶ。何度も何度も親方から同じ話を聞く。
あの時と今とでは、同じ話を聞いて理解度も変わるだろう。こういったことも大切にしようと考えています。
もしも関取が出た場合、誰が誰の付け人になるか分かりません。必ずしも入門した順に強くなるとは限りませんし、これから入門してくるまだ見ぬ後輩に、自分が付け人として付くことがあるかもしれません。
身内から不満の出る関取にならないよう、
勝てば付け人が心から一緒に喜んでくれるよう、
自分も付け人に、「お陰様」と心から感謝の気持ちを伝えられる人になれるように。
そして、引退後も人として一生の関係を築けるよう、立派な力士を目指してほしい。親方はそう伝えています。
大人になれば、
あの時もっと勉強しておけばよかった。
あの時もっと稽古をしておけばよかった。
そうすればもっと上にいけたかもしれない。
必ずそう思う日が来ると親方はよく皆んなに言います。
皆んなは今がその「あの時」です。
まだ何も遅くはなく、今からなんでもできます。
まだまだやれると思うことで一日一歩ずつ、もっともっと気持ちも強くなれます。
稽古も、相撲部屋での生活も、すべて。
今を精一杯生きてください。