西岩部屋おかみさんブログ

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12/07若龍星が19歳、12/14若松永が17歳になりました


12月7日
若龍星 19歳のお誕生日です。
uucfT0KUNO.jpg八女の里がケーキを運びます。
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12月14日
若松永 17歳のお誕生日です。
_var_mobile_Media_DCIM_140APPLE_IMG_0825.HEIC若鳥海がケーキを運びます。
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【若龍星】
西岩部屋発足当初、それはもうやんちゃで手がかかる子が、若龍星でした。
親方は、事あるごとに和室で一対一で長い時間を費やし諭していました。
私も親方がやっているように、同じように一対一で向き合ってみましたが、若龍星の心が自分に付いてきてくれていない事が対話していてもよく分かり、当時、どうしていいか分かりませんでした。
親方は相撲の実績があります。力士たちは、親方も若い頃に自分たちと同じように苦しい道を辿って来たんだと思うと、従順な気持ちになれます。
おかみさんはその人のただの奥さん。
今日から私が母親代わりです、といきなり登場し、"言うことを聞きなさい"は、無理があります。
警戒心の強い賢い子ほど距離を取るでしょう。

その頃は、家の中にある幼児対象の育児本などをよく夜中まで読み漁りました。
そんなものを読んだところで、幼児と10代の青年は同じようにはいきませんし、そもそも育児本通りに子育てできるかといえば、そうもいきませんし、それが目の前にいる子どもにとっての子育てに全て当て嵌まる答えかといえば、必ずしもそうではありません。

それでも読み続けていく中で、一筋の光が見えた文章がありました。

"フローリングにわざと水を溢す子ども。
叱りつける親。
わざと溢しているのだから、悪いと分かっていてしていると決めつけて叱ってしまっているのです。"

この文章を読んで、私は若龍星に対して、最初の頃はこればかりだったと気づき、反省しました。



育児本のフローリングの話には続きがあります。
子どもの気持ちに寄り添い、訊ねてみるのです。
"「どうしてお部屋にわざと水を撒いたの?」
子どものこたえは、
「だって、これは木でしょ?保育園では木に水をあげるとお花が咲いたよ。お花、おうちにも咲いてほしいから。」でした。"

子どもには、子どもなりの『理由』がしっかりとあるのです。

「普通は」や、「常識的に考えると」と勝手な決めつけで、子どもの心に寄り添えていないことが山ほどあるんだなと知りました。



共に過ごす時間が長くなるにつれ、若龍星の心が少しずつ見えてきました。
人に優しく、穏やかで、とても良い子です。
若龍星の性格を知るうちに、あの時も、、、あの時も、、、きっと悪気なんてなかったんだろうなということがあとになり、分かります。
ただ単に弟弟子を楽しませたいだけだったという簡素な理由が、結果的に怒られることに繋がった。そう、若龍星の普段の行動を目で追っていくうちに紐解いていかれます。


もうすぐ親御様からお預かりして二年になりますが、今では親方からの信頼も厚く、親方の思いを自分が汲み取り弟弟子に伝える物腰の柔らかさ、うまさは、若龍星の天性の才能です。

部屋を引っ張らないといけない立場になって若龍星はますます良いところが伸びました。
大部屋の雰囲気を、見事に自分の色に変えてくれました。
また新しい「西岩部屋」が子どもたちの中で創られたように思います。

最初に一番手を焼いた分、今、若龍星がどんどん可愛く思えます。
自主トレの量は部屋一。いつも頑張りすぎているあなたに、10代最後の年、この言葉を送ります。
時には親方や私に甘えて子どもになってください。




【若松永】
西岩部屋では若龍星に次いでやんちゃな力士でした。
正確に申しますと、一見そう見えてしまう節のある子です。
鋭い切り口の関西弁は、「笑い」と取る人もいれば、「こわい喋り方だな」とびっくりしてしまう人もいます。
私も若松永も関西弁が全く抜けません。せめて度が過ぎる関西弁だけでも封印し、気をつけていかなければいけないと常々お互い言い合っています。
しかし、若松永は、強い言葉の印象とは反比例した、温かい思いやりを持っています。
もし誰かに「若松永の良いところはなんですか?」と問われましたら、私は迷わず「性格」と答えるでしょう。
部屋の皆んなで移動していたときのこと、ひとりが空港の階段で大きな荷物の中身をぶち撒けてしまいました。荷物の入れ方、持ち方が原因でした。
他の皆んなは拾う様子を見て待ってあげている姿勢の中、一人、「何してんねん!」と強い言葉を発したのは若松永でした。
そして、「もー!」と言いながら駆け寄るのも若松永です。誰がどうなりましても、こういう時、毎回若松永が手伝ってあげています。
ちゃんこの時も、「そうやって食べたらこぼすで、こぼすで!」と常にお世話を焼いています。
親方と私はそんな若松永を、『大阪のおかん』みたいだねとよく言います。
口調はやや強めですが、放って置けず、お世話を焼く若松永は情が厚く本当に良い子です。
自分に正直でとにかく性格が抜群に良いというのは、親御様の育て方です。お母様は「周りの人を大切にするようにとそれだけは教えてきました」と仰っていました。


志願者ではなく、親方の熱いスカウトに応える形で西岩部屋に来てくれた子です。
もともと相撲に興味がなかったため、夢や目標の設定自体、思い浮かばず、最初の頃は積極的な自主トレにも足が向くこともなく、何もしていていない時間を過ごすことも多々あるように見えました。
親方は若松永本人には全く何も言いませんでした。
私には、「それが当たり前だから。」と教えてくれました。
好きで入った訳ではないのに、「目標は、絶対に関取になることです」などと言えるわけがない。俺でも最初は恐れ多くてそんなこと言えなかったと。
だから松永はとても自分に正直。伸び伸びと成長してほしいから何も言わない。そのうち、あの子は勝つ喜びを体で覚える。そしたらきっと、来場所も勝ち越したい、もっと強くなりたいと本気で思うようになってくる、そして何かが明確に芽生えるだろう。
親方は若松永には、もっと自主的にこうしなさいああしなさいとは、今でも言いません。
ただ、若松永の素質にはなみなみならぬ大きな期待をかけています。

17歳になりましたが、今がとても素敵です。そのままの若松永で毎日笑顔で過ごしてください。





12月14日、
夜21時半、翌日の天気予報は晴れ。
幾つか星が出ています。
事前に皆んなでオリオン座の形を覚え、

_var_mobile_Media_DCIM_141APPLE_IMG_1376.JPGGoogle検索 『オリオン座 フリー素材』より)


たまには星を見上げてみませんか?ということで、皆んなで屋上へ行きました。


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東京の空、

_var_mobile_Media_DCIM_140APPLE_IMG_0848.HEIC写真では分かりにくいですが、スカイツリーには東京オリンピックまでのカウントダウンのメッセージが映し出され、そのスカイツリーの右側に、冬を代表する星座、オリオン座が見えました。
「あ、あれだ!三つ点点点...となってるやつ」と、指を差して確かめ合います。

若龍星の本名は、龍星(りゅうせい)
若松永は、輝透(きずく)です。

東京は普段あまり星が見えないのですが、冬の寒く晴れた日にはくっきりと見えます。
お相撲さんになって、こうして白く輝く星を見て、いろんな想いを抱いて欲しいと願います。



やんちゃだった二人は、よく叱られ、乗り越え、よく褒められ、逞しく部屋を引っ張る存在になりました。
これからも、ますます大きく輝いてください。