西岩部屋おかみさんブログ

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2019/10/04 親方と八女の里が秋巡業へ出発

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朝稽古中に降っていた雨も晴れ上がりました。
時刻は午前11:30。秋巡業に出発です。
肩には大きなスポーツバッグ。手には親方のスーツケース。今年は、八女の里が親方に帯同いたします。

巡業に出れば、ほぼ全員が八女の里より先輩です。良い意味での縦の社会を学べます。
そして各地のお客様とふれあえること、横の社会も体感できます。
巡業は、大相撲の世界を縦にも横にも広く深く勉強できる最も良い機会です。




巡業前日、屋上で洗濯物を干す八女の里。
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入門から一年半、知れば知るほど、本当はいつもいろんなことを考えているとてもしっかりとした子だなというのが印象です。

自分の気持ちを相手に伝えることが苦手な八女の里は、入門時、メールの返信も非常に苦戦していました。
何か伝えましても最初の頃は既読が付くだけで、どんな言葉を返して良いのか迷っているようでした。
誰からどんなメールが届いても、たとえこの後すぐに顔を合わす人からのメールに対しても、返信は必ずすること、と伝えました。

それからは、「はい」「ありがとうございます」「わかりました」などの返信は来るようになりました。
まだまだです。
力士は、大人のかたとのお付き合いが多い職業です。力士に求める在り方もそれぞれです。
返事は「はい」とだけのほうが良いときもあれば、感想や意見を述べたほうが良いときもあります。
何度も何度も八女の里には返信を求めるような終わり方でメールを打ちました。
その頃、八女の里は負け越し無しでどんどん番付を駆け上がっていましたので、このままではいけないという不安がありました。
「相手にちゃんと伝えなければ無骨だと誤解を生むこともある。年齢は関係なく、番付が駆け上がれば、番付同様、もしくはそれ以上の教養と礼儀作法が求められる世界。勝ち上がっていくだけでは本当のお相撲さんになれません。」と厳しく指導したことを今でもはっきりと覚えています。
メールの返信ひとつのことで言い過ぎたな、とすぐに後悔しましたが、八女の里は素直に聞いてくれました。
苦手なことを克服していきたい、と丁寧に言葉を選びながらゆっくりと話してくれました。

それからは、メールの返信一つをとりましても本当に心のこもった感情溢れる誠実な文章で返してくれるまでになりました。
先日の園児との交流会の写真をメールで送りました際には、小さい子たちとふれあえてよかったという感想を添えて。
そして、何ヶ月も前になりますが、八女の里ではない他の力士が間違った言動をした際、親方が自宅階に全員を呼び集め、皆んなの前で指導した日のことです。
長い時間を費やしましたので、"力士たちの貴重な時間を奪ってしまってすみません"という主旨のメールを送ったのですが、八女の里から私に届いたそのときの返信はこうでした。
「お疲れさんでございます。自分は時間を奪われたとは思っていません。それで良い方向に変わってくれればと思っています。親方、おかみさんの、、、、」とあと一行、内容の濃い文章が続いていました。
短い文章の中に自分の気持ちが簡潔に纏められていて、それはありのままの八女の里らしい文章でした。
心から嬉しく、感動いたしました。

巡業では、初対面の兄弟子の方々と同じ部屋で宿泊することもあります。
親方、先輩方が稽古場、支度部屋でどんなことをしているか、一挙手一投足に注目し、仕事を覚え、多くの方々と交流を深め、自身の向上に繋げてください。有意義に過ごして欲しいと願います。


八女の里が部屋に居ないと寂しくなりますが、またひと回りもふた回りも人間的に大きくなって、地元九州入りすることを、心より祈っています。