西岩部屋おかみさんブログ

大相撲西岩部屋の備忘録として利用しています。【公式twitter】https://twitter.com/nishiiwabeyaです。

2022/01/01 元旦式

新年明けましておめでとうございます。
旧年中賜りました多くのご支援ご厚情に心より感謝申し上げます。
お陰様で、西岩部屋4度目の元旦式を迎えました。

令和4年1月1日 元旦式の朝
親方は和室にいました。
お年玉の準備、確認をしています。

お寿司も届き、大部屋に運ぶお節料理の用意も整いました。
大部屋では、ちゃんこ番さんたちがすき焼きの準備をしてくれています。




先ずは、師匠へ元旦の挨拶です。
番付上位の力士から、一人ずつ和室へ入ります。
大きな体を折りたたみ、正座で両手をつき、

「明けましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします」

ゆっくり丁寧に頭を下げます。


外に住む行司さん呼出しさん床山さんからはお年賀をいただきました。





挨拶を終え、大部屋へと場所を移します。
鍋を火にかけ、位置を確認します。
相撲部屋の鍋は大きいため、コンロにかけるにも慎重に行います。



この日の味付け担当は透輝の里です。
親方に味見の小皿を手渡します。


出来上がりです。
元旦式ですき焼きをいただきますのは、先々代からの伝統です。
昔は、すき焼きのような豪勢な料理はそういただけなかった。年に一度、有難みをもってお正月にすき焼きをいただく。
そういった意味があるようです。



祝い箸は、大晦日に家長が家族全員分の名前を書き一晩神棚に供えます。

西岩部屋では、相撲部屋の家長といたしまして、毎年親方が皆の四股名を書いています。



親方が一つ一つお節料理を紹介します。
所狭しとたくさん並んだ殆どのお料理の食材が、西岩部屋を応援してくださる皆様からの頂き物です。
皆様の支えがあり、こうしてお正月に華やかにお節料理を囲めますことを、皆で感謝していただきます。



お寿司は一人一桶です。
お相撲さんは二人前!


なますは年末にお相撲さんたちが作ってくれました。
大根、人参は、いつも野菜をたくさん差し入れてくださいます元お相撲さんより。



なますの風味の柚子は、いつも稽古見学にお越しくださるご近所様より。


蓮根は、親方が現役時代からアスリートの栄養管理、予防医学で長年お世話になっています京都の杏林予防医学研究所山田豊文先生より。
生き生きとした泥付き蓮根でした。


蒲鉾は、愛媛県宇和島市の『河内屋蒲鉾』様よりいただきました。

こちらは京都市北区の『すぐき樽元北波』様よりいただきました。
すぐきは京都を代表するお漬物です。




乾杯の音頭は、お相撲さんの中で一番の年長者であります八女の里がとります。




大人たちのためにお酒も並びました。
親方の幼馴染みの青森県弘前市の蔵元『三浦酒造』様より「豊盃 黄金の穂」。
お相撲さんの親御様より「超特選月桂冠」。
新年にと親方が大事にとっておいた金粉入りの祝い酒。
飲みきれませんが、こうして目の前にありますだけで宴が華やかになります。



お相撲さんたちのお屠蘇は、前日、親方がみりんで拵えたものです。
こういった時代ですので、器は回さず一人一人小皿でいただきます。
甘くてとても美味しいお屠蘇です。

西岩部屋の東の方角、太陽の光が入る大きな窓のほうに体を向けて、歳の若い者から順にいただきます。
今年一年の抱負も述べました。

親方からのお題は、
【相撲のことと、相撲以外のこと】


相撲のことでは、全員が一段上げること、勝ち越しを挙げていました。
相撲以外のことは、皆それぞれで、個性がよく出ていました。



若箭原 祐太
大阪府摂津市出身 16歳

「人として成長したい。
具体的には、礼儀正しく嘘をつかない人になりたい。」

普段親方が言っている言葉をよく耳で聞き理解しています。親方はいつも嘘をつく人間が一番悪い人間だと教えています。
「聞く力」、これがいかに大切か。
柔軟性のある若箭原は、親方が今何に対して皆んなに注意しているのか、自分たちにどういう人間になって欲しいと求めているのか。その深い意味まで一度で理解する力があります。
柔軟性があると書きましたが、確固たる正義感もあります。こちらが全員に意見を求めるときでも、自分が少数派の意見に入っていましても、堂々と手を挙げ、自分はこう思います、と言える芯の強さも持っています。




若田中 優霧
兵庫県尼崎市出身 16歳

「次に入ってくる子たちにいろんなことを教えられるように、去年一昨年よりも掃除のこと、ちゃんこのことをしっかり頑張りたい。」とのことでした。

次に入ってくる仲間たちに何でもお兄さんらしく教えてくれるだろうと期待しています。
若田中は、とにかく満遍なく知識豊富です。
趣味の電車関連は勿論のこと、地理、各都道府県の名産品、難しい漢字などなど、16歳とは思えないほど一般常識をよく知っています。
ご実家でおばあちゃんと住んでいたことも大きいと思います。
物事を説明したり、会話をすることが得意ですので、これからも普段の会話の中で、皆んなにいろんなことを優しく教えてあげてください。




若金子 響
高知県高知市出身 17歳

「今までは教えてもらうばかりでしたが、これからは教えていけるように頑張ります。」

物腰が柔らかくとても丁寧ですので、きっと教え上手だと思います。
若金子は、男の子4兄弟の上から3番目として育ちました。まさに相撲部屋のような環境で、弟でもあり兄でもあり、どちらの立場も気持ちも分かることは、人の気持ちに寄り添える最大の強みです。
自分が育ってきた経験を活かして、相撲部屋でも、上からも可愛がられ、下からも慕われるような素敵な人であってください。




若大根原 瑞規
東京都練馬区出身 18歳

生活面において苦手としていることがある若大根原。
「苦手なことを克服できるよう、頑張ります。」

自ら西岩部屋の門を叩き、飛び込みで弟子入りを志願した若大根原。
ボクシングをしていた頃は一人でストイックに頑張ってきました。
生活が一変し、相撲部屋では毎日がワイワイガヤガヤの集団生活です。人一倍戸惑うことも多いと思います。無理に頑張ろうとせず、肩の力を抜いて自然体でいてください。
若大根原は個性豊かでとてもチャーミングな性格です。そのままの自分で、さらに学び、皆んなとのいろんな経験をゆっくりと一つずつ楽しんでください。




透輝の里 大
大阪市平野区出身 19歳

「お金を貯めます」

これはとても良いこと!
相撲一本で稼ぐことの素晴らしさを親方はいつも皆に教えています。
お相撲さんがお金を貯めると発するのは、それはもう「相撲で勝ちます」ということを意味しています。お金、お金、と言いますと聞こえが良くないとの捉え方もありますが、部屋でもお金の大切さ、素晴らしさを教えています。
親方は、「皆んなを迎えるために、夢である親方になった。この部屋を創設した。車を買った。あれもこれも全部土俵の中で得たお金だよ。」
いつも皆んなにそう話します。



若藤岡 耕司 
大阪府東大阪市出身 19歳

「先輩らしいところがないので先輩らしくできるように頑張ります。」

そんなことありません。
人の悪口を絶対に言わない。人をからかったりしない。あと、悪いことをしてしまった仲間のことも親方や私の前で必死にかばう。
あなたのそういうところは、真似できないほど良いところであり、弟弟子も必ず心の目で見ています。あなたの存在があるから部屋に優しい空気が流れています。



八女の里 晃
福岡県八女郡広川町出身 21歳

「皆んなの中で一番年上なので、緊張感を持って恥ずかしい姿を見せないようにする」とのことでした。

かなり努力をしています。
入門した頃は、お世辞でも整理整頓が得意とは言えませんでした。自分が部屋頭となり年長者となったあたりで、劇的な成長がありました。
自分のロッカーを綺麗に整理整頓し、ちゃんこも大きな魚の捌き方など積極的に覚え、ちゃんこを食べるスピードも周りを見て、片付けなどの次の仕事に向けて、時間を読み、自分が弟弟子を引っ張るようになりました。
自主トレに関しましては、
"誰もいなくても自分は夜土俵に居る。そうすればいつか皆んなが付いてくる。"
その精神で毎日続けています。
上に行けば行くほど元々持っている誠実な強い底力を発揮する。それが八女の里です。
親方の信頼も絶大です。これからも頼りにしています。



行司 木村一馬

「西岩部屋の一員になったので、迷惑をかけないようにしたい。地方場所では宿舎住まいなのでお手本になれるように。」とのことでした。

会話をしていましても、メールでやり取りしましても、必ず自分のことよりも周りの人を気遣う言葉があります。その言葉があまりにも自然で、これまでもこれからも自分のことは常に控えめに、これが木村一馬の生き方なんだろうと心が温かくなる思いです。
仕事が正確丁寧で早く、とても力になってくれています。


床山 床明
千葉県船橋市出身

「お相撲さんたちの頭がテレビで綺麗に映るように頑張りたい。」とのことでした。

床明は、西岩部屋のお相撲さんたちだけでなく、本場所中はテレビに映る関取の髪も結っています。テレビ映りを考え、お相撲さんをお相撲さんらしく輝かせる。
魂を持って仕事をするその姿勢に感銘を受けました。
一番お相撲さんたちと心の距離が近い存在だと思いますので、大部屋が平和かどうかいつも見守っていて欲しい大事な存在です。


呼出し 弘行

「土俵の俵が壊れる原因を探り、もっと対策を考えていく。」とのことでした。

部屋のお相撲さんたちと同じく、まだ土俵の土も若いため、呼出しさんにはいろいろとお世話をかけています。
親方と弘行は、部屋が一緒になる前から、いえ、それ以前から、青森で子供の頃からの仲です。
現役時代、若の里の講演会を弘前で開催しましたが、その際も、進行役を務めてくださいましたのが、弘行のお父様です。
ご縁とは本当に不思議です。元旦式では弘行だけが知る親方の中学生時代の武勇伝で盛り上がりました。



呼出し 正男
神奈川県横浜市出身

「何か相談があったら自分でよければ何でも乗るよ。」とお相撲さんたちに向けて、冗談をたくさん挟み、ユーモアたっぷりにお話ししてくれました。

皆んなの初笑いは正男の挨拶だったかも知れません。
こんなに明るく陽気な方だったとは。
親方も正男って面白いな〜と何度も大笑いしていました。
元旦式がパッと明るくなり、皆んなが笑顔になりました。



弘行にお屠蘇を注いでいただきます。
親方は皆に、

「人としての成長はもちろんのこと、礼儀正しい部屋であってほしい。」

そう語りかけていました。





和やかに宴が進みます中、お相撲さんたちが気遣いを見せ、よく動いていましたことが印象的でした。


娘もにこにことご機嫌で、おとなしく遊んでいました。



昨年は、お相撲さんたちにとりまして、楽しいお兄さんが一気に4人できたような、新しい風が吹いた一年でした。











最後に皆でお雑煮をいただきました。
お餅は、現役時代から若の里をずっと応援してくださっています新潟のファンの方より届きました。



まだ4年弱の小さな部屋ですが、これからも、謹厳実直に、西岩部屋らしさを構築してまいります。

海外のお客様が、日本の京都を訪れ寺院を巡り着物姿で歩く日本人を見て感激するような。
富士山の美しさを見て感動するような。
これぞ日本の美しさと心で感じて頂けますような厳しくも常に前を向いた相撲部屋を目指してまいります。

たたき上げの力士を育てるのは時間が掛かります。3年、5年では形にならない。関取誕生はまだまだまだまだ先の話だと親方は申します。
日頃より、痺れを切らさず今この成長段階を応援し見守ってくださいます皆様に、心より御礼申し上げます。




年が明けましたらもう初場所間近です。
お餅のように粘り強く伸びやかに、新しい一年を過ごせたらと思います。

皆様にとりまして、幸多き一年でありますよう心よりお祈り申し上げます。