快晴の浅草。
太陽高く、正午を過ぎた頃のことでした。
親方と近所を散歩し、部屋の前まで戻ってきたところで、自転車置き場から「お疲れさんでございます!」と大きな声が聞こえました。
振り向くと、若田中が自転車のタイヤをクルクル回しています。
「どうしたの?」と訊きますと、最近自転車のタイヤの調子がおかしいので、どこがどうおかしいのか確かめています、との事でした。
空気を入れるところのキャップを外してみたり、タイヤに傷がないか顔を近づけ、手を汚しながら確かめています。倉庫から一人で空気入れも出してきたようです。
この時間、お相撲さんたちはお昼のちゃんこの片付けが終わって、お昼寝をしたりゴロゴロとくつろげる貴重な時間です。
その貴重な時間に、"さあ、自転車のタイヤの不具合を確かめよう"と、誰に頼まれたわけでもなく動いてくれるその探究心に、親方もえらく感心していました。
気になったとしても他の誰かが気付くまで、もっと言えば親方が気付くまで放っておく事もできます。
若田中は、どんな時も、これは一体どうなっているのかな?と自分が納得するまで調べたり、理解しようとする気持ちでとても強い子です。
部屋に何か送られてきましても、説明書をまず自分が最初に手に取り読みますし、分からないことはすぐに携帯で調べています。
今回は、自分の自由時間をその探究にあててくれていたことに、とても嬉しい気持ちになりました。
きっとこういう子は、自転車だけでなく部屋で何が壊れた時でも関心を持って修理に協力的に携わってくれることでしょう。
実際、最近大部屋の掛け時計に不具合があったのですが、若田中が自分が持っていた電池と入れ替えてくれて、動くかどうか確かめてくれたと他のお相撲さんから聞きました。
部屋の物は、自分たちが毎日使っている物ですが、自分の所有物ではありません。
そういった物でも大事に使う心、それが「感謝」の心だと思います。
ありがとう!
お疲れ様でした。